晴れた日の公園で、なにやら不思議なものをしている老紳士に出会った。
老紳士の節くれだった手からムクムクと煙がたち、やがて大きなヒトガタになった。紳士が人差し指と親指の間からふうっと一息かけると、ヒトガタはおおきく一回りして、ぱん と乾いた音を立てて無数の白い蝶になって飛んで去った。
白い蝶が残した燐粉がはらはらとアクリルのボールになって落ちてきた。
これは…だいぶ
溜め息をつくように出た言葉で先方はこちらに気がついたようだ。
なんとも、お上手ですねえ
声をかけると、紳士は人の良さそうな顔で答えた。
お恥ずかしい、これは買ってきたものでねえ
ほう、売っておるのですか。どこです
あの、大きな文具屋があるでしょう、あそこで。
このように、けっこうな大仕掛けですから、猫が驚くもんで家ではできんのです
少しバツが悪そうに笑んだ。
今時の市販品はよくできてますな
いやまさに。おや、
何かに気付いたようにつまみあげた。
消えませんね。
それは先ほどの、蝶の燐粉が落としたアクリルのボールだった。
さしあげましょう?
受け取って光にかざすと、中では小さな蝶がきらきらひらひらと舞っているのだった。
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