随分と無沙汰をしていた友人から突然小包が届いた
見ればそれは一匹の手乗りの象であった
つい先達て、可愛がっていた獏を亡くした。その悲しみもさる事ながら、それよりも家の中はあふれ出た夢で大変なことになっていた。トイレのふたからは雲が湧き出るし、湯を沸かせば丸いボールが部屋に漂い出るし、布団なんてあっちこっち好き勝手な部屋に移動して楽しんでいる。この前など、洗ったばかりのタオルが水たまりで遊びはじめて洗い直しを余儀なくされた。そろそろ新しい守を飼わなければいつまでたっても家の中がおちつかない、ということは頭ではわかっていたのだが、飼われる側の事を考えればできるだけ適当には選びたくなかった。
この友人は不精の知己を思ってこの象を贈ってくれたのだろう。会えば必ずこの話をしていたから誰かから聞いたのかもしれないな。
象は箱から出るなりまず台所に向かうとチェダーチーズにむしゃぶりついた。獏はりんごを好んで食べたが、この象は何が好みだろうか。
きらきらと輝く小さな瞳を眺めながら、一分ごとにチャンネルを変えているラジオを聴くともなく聴いていた。
PR
トラックバック
トラックバックURL: