冷蔵庫に何かいる。
小さく扉を開けると、シュウシュウという音がする。
もう少し開けて中を覗こうとしたら、逆に中から押し返された。慌ててバタンと閉めた。
すると中からドタンドタンと叩く音がする。これはまさか。
「賞味期限が切れたかもしんない!」
慌ててトイレ掃除をしている母さんの元へ走ると、
「またなの!だから食べ切れないものは買うんじゃないってあれほど言ったのに!」
タワシを投げて母さんが飛んできた。
母さんはゴム手袋をしている手そのままで冷蔵庫を勢いよく、えいっと開けた。
途端に飛び出す、手、手、手。扉が激しい勢いで弾け飛んだ。それは何かを撒き散らしながら高速で母さんの右手に巻きついた。飛沫が床を濡らした。粘液のようだ。ぬらぬらと緑色に光っている。
「あらやだ!まったく、いつまでも誰も食べないからこんなんなっちゃうでしょ!勿体ないったら」
母さんは巻きついてシュウシュウと音を立てる物体を、右手を横に一閃することで壁に叩きつけた。しばらくぐねぐね動いていたが、それがまさに落ちようとした瞬間、鋭く光るものが飛んできてズドンと音を立てて壁に縫い止めた。母さんが台所から包丁を真っ直ぐに投げたのだった。緑だったものは紫に変わり、動かなくなった。
「それ、何だったの…?」
「さあ。シュークリームか何かじゃないの。臭くなっちゃうから早く捨ててちょうだいよ、母さんそんなの片付けるのイヤだかんね。」
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