両親にひどく叱られた、試験で良い結果が出なかった、そんな日は頭まで布団をかぶってオルゴールを開く。
かつて怪しげな露天でもらったそのオルゴールは他の誰に持たせても全く開くことはなかった。これが夜になると淡い燐光を放つことも、他の誰でもない自分だけが蓋を開くことができる事も、誰にも言ってはいないしいけないのだと思っている。なぜなら中にいる小さな人が生きているようすだったので。
せまい暗闇の中でいつものようにネジを捲いてそっと蓋を開けると、途端にまわりがキラキラとした暖かい光と音で包まれた。ぼくをやさしく癒すカノンのメロディー。中には、白くフワフワしたシフォンドレスを着てこちらを見上げる、いつもの、かわいらしい女の子がいた。
「きみが、はなせたらいいのに」
その言葉が伝わったのかそうでないのか、女の子は笑顔で小首をかしげた。
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